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『アーカイブズ学研究』第1号〜第9号要旨«No.1-No.9 Abstracts»
 
<創刊号>«No.1»
 
アーカイブズ−エビデンス、ヒストリカル・ドキュメント、ヘリテージ(青山英幸)
 
  この報告は、フランス革命の申し子、フランス国立文書館開設以降の近現代アーカイブズの歩みと、19世紀末にアーカイブズの編成と記述に関する教科書「ダッチ・マニュアル」が上梓され、その後発展してきたアーカイブズ学の軌跡を、日本におけるそれらの受容過程を踏まえて概観し、今後のアーカイブズ学を構築するために、現在の課題について触れることを目的としている。
アーカイブズは、19世紀にヒストリカル・ドキュメントの宝庫として定着したが、第2次世界大戦後、アーキビストがアーカイブズ保存に積極的に関与し始め、一方では、口承アーカイブズの保存、すなわちヘリテージを担うものの保存という面が導かれた。他方では、電子記録の保存、原本性を如何に保証するかという面が検討されたことにより、記録化することの重要性(これには口承ヒストリーも含む)が指摘され、記録化を支えるエビデンスの保持が核心とされてきている。このエビデンスを保証するものは、アーカイブズを成り立たせているコンテクスト・構造・内容などのメタデータであり、これはアーカイブズの編成と記述のコントロール(ISAD(G)、EAD)と同一な世界を構成している。今後、これらの歩みを踏まえて、図書館情報学などと協同で、新たな地平を築きあげなければならない。
 
学際研究としての記録学とアーキビスト教育(金 翼漢)
  韓国では、アーカイブズ学archival scienceを「記録学」と訳しているが、これにはいわゆるレコード・マネジメントも含まれている。報告者は最近、韓国の大手企業において記録情報管理体制確立のためのコンサルティング・プロジェクトに携わり、記録学がいかに実用的かつ学際的な学問であるかを実感した。この経験から、本報告ではまず、記録学の教育、すなわちアーキビスト教育において、学生の現実対応能力を育成するため、電算科目などの実習型授業を充実させると同時に、講義型授業を適切に配置したコースワークを教育システムの中心として積極的に採り入れることが重要だ、と主張している。またアーキビスト教育の基礎である記録学の発展には、記録に関する社会的な経験を蓄積しこれを学問化する努力が不可欠であり、そのため、システム工学、経営学、歴史学、文献情報学(図書館情報学)、法学、行政学などの関連分野との学際的共同研究を学界レベルで組織し、その成果をアーキビスト教育に還元することが大切だ、と強調している。
 
歴史学とアーカイヴズ運動(保立道久)
  アーカイヴズと歴史学のアカデミーは相互に自律性をもっているが、基礎にドキュメンテーションをもつという点で共通した性格ももっている。今後、その協力の基礎は、データベースとネットワークになるであろう。コンピュータがドキュメンテーションの仕事に入り込んできた理由は、第一にわれわれの扱う素材、「紙」がきわめて大量に存在すること、第二に、精細な記録性を必要とすること、第三にデータの共有性であった。しかし、それに対する社会的認識と社会的費用をどう確保していくかを考える場合、おのおのの努力を前提とした上で、やはり現状では歴史教育と地域文書館から問題を提出するほかないというのが現実ではないか。その場合、国際水準のアーカイヴズの形成という課題は、それが日本の社会の「体質」に関わっている以上、きわめて困難であることを事実としてふまえなければならないだろう。このような問題の性格は、歴史学のみでなく、法学・経済学をふくむアカデミーの側が深刻に議論する必要を指し示している。
 
パンダ・シンドロームの脱却−図書館情報学の再構築(永田治樹)
  図書館情報学は、時代の変化に合わせて、従来の図書館学とドキュメンテーションやそれから生じた情報学を重ね合わせて1960年代に成立した学問領域である。しかし、進展する情報技術の革新により、1980年代に入ると、文献情報中心であった図書館情報学は、いくつものライブラリー・スクールの閉鎖といった大きな試練に立たされた。これを、Nancy A. Van HouseとStuart A. Suttonは、死滅危惧種であるパンダに倣って、図書館情報学のパンダ・シンドロームと命名した。
このVan Houseらの問題提起と図書館情報学教育に関する現状把握プロジェクト(KALIPER)の知見に基づき、以後、打開策が積極的に検討され、今では、図書館情報学教育は、/渊餞曚妨堕蠅靴覆すい問題設定、他の専門分野の導入と利用者中心の立場、IT科目の増設、だ賁臉についてカリキュラムの試行、ソ斉陲房講できる教育の提供、広範な学位の提供などが行われている。また、現下の図書館情報学の研究領域は、「情報技術、情報・知識(コンテンツ)、情報システム、人間の情報行動、またがる領域」の五つのカテゴリーにまとめられる (Joan Durrance)。わが国でも狭いニッチを脱却すべく進展方向が模索されている。
 
資料認識とナレッジ・マネジメント−博物館情報学の立場から(水嶋英治)
  情報社会における博物館情報の流通を考えた場合、それを保証するための新たな枠組みが前提条件となる。本稿では、次の3つの観点から指摘した。
第1点目は資料認識の問題である。何を資料として認識するか、また博物館、文書館、図書館などの取り扱う「資料」に対する認識の相違点を認識することの重要性を指摘した。
第2点目は「資料記述の問題」である。図書館・アーカイブズ・博物館の資料記述に関して三機関を横断したメタデータの標準化を考察対象にしなければならない。
第3点目は、文化的情報生産の課題である。資料の情報価値を損なわない方法で情報を生産していくのか、資料に付加価値をつけていく方法で記述していくのか、今後の哲学とも関係するトピックも検討対象としておかなければならない。
 
 
<第2号>«No.2»
 
テオ・トマセン
  本稿は教育を目的として、まず簡潔で基礎的なテキストであることを意図して書かれている。叙述においては一貫して、アーカイブズ学の中心概念の定義と解説をこころがけた。論争スタイルはとらず、また制度化されていない視点からは距離を置いている。これは、或る特定の理論を支持あるいは拒否するのではなく、全体的な概観を示すという目的からである。したがって、読者はこれを、新しいアーカイブズ学のマニフェストとしてではなく、多様な着想や視点が総合されたものとして読んでいただきたい。仮に小論に新しい点があるとしたら、それは一貫した統合の叙述スタイルにあると思う。アーカイブズ学入門という性格から、注は付けていない。
  キイワード:アーキビスト教育、アーカイブズ理論
  *上記は、原著者による要旨。他の原稿は論考扱いではなく、要旨はない。
 
 
<第3号>«No.3»
 
平井孝典
  2001年に情報公開法が制定され、国立大学法人でも適正な文書管理が試みられてきているといわれる。しかし、多くの国立大学には非現用文書の受け入れ先がなく、歴史的あるいは学術的に重要な文書等が失われる可能性がある。歴史的に重要かどうか検討されることなく、保存期間の満了した文書が廃棄されているかもしれない。従って、公開できないとされる個人情報の含まれた歴史的に重要な文書が、永遠に見られないかもしれない。本稿では、卒業論文を例としてとりあげ、将来それが歴史的資料として見られるかどうかについて考える。最初に国立大学法人での卒業論文の実際の扱いについて見ておきたい。次に、情報公開法における個人情報について説明し、最後に法人文書に含まれる著作物について考える。
  Since Law Concerning Access to Information Held by Incorporated Administrative Agencies, Etc. was established in 2001, it has been claimed that National University Corporations have tried to manage their official documents appropriately. Nevertheless, their older organizational documents or their cultural materials may have disappeared, the reason being that most National Universities did not have their own archives, and may have disposed of documents and other records without asking whether some of them should be preserved for historical purposes. Personal information, which is closed but may have had historical or academic value may have been destroyed without having been disclosed.
This article focuses on theses. We should question whether they could be used or disclosed at those universities at present or in the future. First, we explain how some universities deal with theses under the law, secondly, we consider what kind of personal information may be closed and when it might be opened, and thirdly, we discuss copyright in those officially held documents that are owned by individuals.
 
馬渕浩一
  本論文は、発電所建設記録映像のデジタルアーカイブズに関する論考である。
電力会社が運営する電力PR館および映像制作会社に発電所建設記録映像が数多く保存されている。元来、この映像は最新技術を駆使した発電所建設というプロジェクト記録を目的として制作されたものである。しかし、発電所が運転を開始した後、所期の目的を離れ、地域住民に対する電源開発の理解増進や安全操業への説明を目的として利用されるようになった。時代の要求に応えて利用目的を変化させたことが、フィルムからビデオテープへの転換を促し、廃棄を免れる一因となった。
今日、この建設記録映像のデジタルアーカイブズが求められている。デジタル化と画像データベース構築によって、過去の古い技術の保存が可能になる。過去の技術は、発展途上国への技術移転の促進と環境低負荷をめざす循環型社会実現のキーとなる。企業アーカイブズを構成する一史料としての発電所建設記録映像の重要性を指摘し、デジタルアーカイブズ構築の意義について考察し提案する。
  The object of this paper is to provide some suggestions on documentary film digital archives on power plant construction. Electric Power Companies in Japan hold hundreds of films on power plants and dam construction in their various museums. Originally, each film was produced as a project record documenting the latest technology.
However, as soon as plants went into operation, the original purpose of the films was changed in order to promote a better understanding of the development of electric power resources or to publicize safety operations to the surrounding populations. This change to meet the needs of the times led to a film to video tape media conversion. Nowadays digital archives of the films are requisites. By digital archives I mean digitalization and the compilation of a motion picture database. This paper aims to show that digital archives make it possible to preserve evidence on old technologies. Thereby, they can play a key role in making technology transfers available to developing countries and can support sustainability with the smallest possible strain on the environment.
 
三宅正浩
  現在、国文学研究資料館が所蔵している蜂須賀家文書の中に、「草案」と呼ばれる一連の史料がある。この「草案」は、蜂須賀家歴代の書状の留であり、特に近世前期のものが多く残されている。蜂須賀家においては初代〜三代までの史料が、依るべき先例として重視されて整理・保管され、天保期の整理事業の際には、保管に混乱が生じていた「草案」の整理・謄写・年代比定が行われた。そしてその際に形成された包紙・貼紙などの原状が、現在にまで引き継がれた。本稿では、蜂須賀家文書「草案」の史料的性格と共に、天保期の史料整理事業をふまえて、「草案」の年代比定作業を行った。「草案」は、近世前期の政治動向や大名の交際を知る上で有益且つ重要な史料である。
  Preserved at the National Institute of Japanese Literature is a group of records titled So-an, a series among the Hachisuka family papers. They consist of copy letters written by the successive feudal lords of the Hachisuka family, most during the early Edo period.  The letters written by the first three lords were particularly important to their successors as they were drawn upon as precedents. Their order was therefore carefully preserved.  However, the So-an went through a major reprocessing during the era of the Tempo era (1830-44) after control had gradually been lost: the original date of each letter was clarified; the original order restored, and copies made.  The present physical order of the So-an is that created during this reprocessing. The wrapping papers and labels attached at that time are still well preserved.  This article analyses the nature of the So-an and draws attention to the Tempo era re-imposition of the original order by means of a detailed analysis of their dating.  The So-an are a useful and important source for the study of politics and the social life of Daimyo in the early Edo period.
 
 
<第4号>«No.4»
 
イ・ヒョンジョン
  韓国民主化運動記念事業会は、1948年の大韓民国政府樹立以後のあらゆる民主化運動を記念し、その精神を継承するための事業を行うことを目的として、2001年に設置された。同事業会は現在、李承晩政権以来の「すべての記憶され、記録されなかった」民主化運動を包括する韓国民主化運動記念館の設立を、2007年度の開館を目指し準備中である。本論文で扱うアーカイブズは同事業会の下部組織である。アーカイブズの使命は、〔閏膕襲親阿亡慙△垢觧卜舛鮗集して安全に保存する役割を担うこと、¬誼畚に散逸している民主化運動史料を集合的な記憶として再構成すること、4慙∋卜舛鮓果的に利用することのできる方法を開発することである。
  The Archives of Korea Democracy Foundation was established in 2001 both to commemorate all the democratization movements that have existed since the formation of the Republic in Korea in 1948 and to promote their values.  The Foundation is now preparing to open the Korea Democracy Memorial by 2007.  The Memorial is expected to incorporate "all the memories as yet unrecorded" since the time of the Rhee Syng-man administration. The archive institution discussed in this paper is a subdivision of the Foundation. Its aims are 1) to collect and securely preserve the historical materials that relate to the democratization movement, 2) to systematize what have been the hitherto scattered historical sources of that movement as a reconstructed collective memory, and 3) to develop effective ways to use such materials.
 
佐々木和子
  1995年におこった阪神・淡路大震災は、アーカイブズ学にとっても画期となる出来事だった。すなわち、災害によって過去の資料が滅失していくのに対し、資料を救出保全しようという動きがおこなわれ、一方災害そのものの記録や資料を未来に保存していこうという動きがはじまったのである。本稿でとりあげるのは、そのうち災害の記録を保存していこうという「震災資料」保存活動である。
この活動は、地震直後から、ボランティアグループ、図書館、行政などさまざまな機関によってはじまった。そして、アーカイブズ学の分野に、何を資料とするか、なぜ資料を集めるか、といった根本的な問いかけを投げかけた。災害とひと、専門家と市民、さまざまな出会いの中で、「震災資料」というアーカイブズが生まれた。
  The Hanshin Awaji earthquake disaster of 1995 was a momentous event in Japanese archival science. In addition to rescuing archival materials which might otherwise have been lost in the confusion, people began to concern themselves with preserving a record of the disaster itself. This paper discusses the latter, the preservation of "earthquake disaster records."
Following the event, various organizations including volunteer groups, libraries and local governments immediately started to compile such records. Their activities raised fundamental issues for archival science: what should constitute such records, and why people collect and preserve them. A category of archival material termed "earthquake disaster records" emerged from society's encounter with disaster and from the interaction of the range of specialists concerned with preservation.
 
李〓龍(イ・ギョンヨン) (〓は「日」の下に「火」)
  国家記録院、韓国学中央研究院、国史編纂委員会などの地方記録に関する収集状況を通じて、全般的な地方記録の収集現況と、同時に新しく模索されている地方記録管理を取り囲んだ主張や動きを紹介することによって、最近の韓国記録管理の動向に対する理解を深めたい。
  The purpose of my article is to introduce the various arguments concerned with the collection of regional records by the National Archives and Records Service, the Academy of Korean Studies and the National Institute of Korean History. My intention is to extend understanding of the current trends in record and archive management in Korea.
 
研谷紀夫・馬場章
  本研究の目的はリアルのアーカイブとデジタルアーカイブの両者が相互補完的な役割を果たすようなアーカイブの設計を行なうことである。アーカイブの対象となる資料は大正期に建設された坪井誠太郎邸の建築資料であるが、これらの資料は私達が調査している坪井家の「家の記録」を構築する上で重要な資料でもある。そのため、建築資料に関するアーカイブと家の記録を保存するアーカイブの両面から、リアルとデジタルが両立するアーカイブ構築を行った。本論文ではその内容について解説する。
  The purpose of the research described here was to design an archive in which the real archive and the digital archive could perform complementary roles. The documents constituting the archive are the architectural records for Seitaro Tsuboi's house, which was constructed in the Taisho era. Those records were also very important in our research for providing historical sources for the Tsuboi family. Thus, we structured an archive in which real and digital records coexist incorporating both the record of construction and the record of the subsequent history of the house. The paper describes the details of this research.
 
 
<第5号>«No.5»
 
上島有
  アーカイブズの整理原則としては、一般に出所原則と原秩序尊重の原則の二つがあげられる。たしかにこれはアーカイブズが一次的記録情報資源という特殊性にもとづいたものである。しかし、わが国の中世アーカイブズ整理の立場からすると、この二つでは十分ではないと考える。アーカイブズ整理の原則(史料管理論)としては、I原形態の尊重、II原秩序の尊重、III原伝存の尊重という三つがあげられると思う。これはIかたち、IIかたまり、IIIかさなりというアーカイブズ学の研究課題、またI形態論、II構造論、III伝来論という史料認識論の課題に相おうずるものでもある。さらにこれは、アーカイブズの生成から保存にいたるアーカイブズのライフサイクルの全過程を考察の対象とするものでもある。このような考えに到達したのは、近世アーカイブズ学の成果と東寺百合文書をはじめとする約10万通の東寺文書の整理の経験によるものである。そして、東寺関係文書は、わが国のアーカイブズとしてもっとも望ましい形で保存されていると考えられ、そのことについて具体的に述べた。
  It is common to refer to respect of provenance and respect for original order as the basic principles of archival arrangement. Although the principles are based on what is natural, or on archives as being primary recorded information sources, these two principles are insufficient when dealing with Japanese medieval archives. The author suggests that there should be three principles for arrangement of such archives from the perspective of archive administration:1) respect for original form, 2) respect for original order, and 3) respect for original custody chain, ie an elaboration on the Western concept of provenance. The three aspects refer to form, aggregation, and accumulation layers, respectively, which should be elements for discussion in archival science. They also refer to theories of form, structure, and custody chain, which are considered from the perspective of archival concepts. The approach also attempts to take into consideration the whole process of document lifecycle from creation to archival preservation. The author has formulated his notions through the study of the outcomes of analysing early modern Japanese archives as well as his experience in arranging over 100,000 items in the Toji Temple archive, including the Toji Hyakugo Monjo archives. The records of that temple are one of the best examples of an accumulation preserved and arranged in ideal order up to the present. Detailed information about the archives is discussed here.
 
針谷武志
  アーカイブズ教育の検討が盛んに行われている。まず日本の大学・大学院におけるアーカイブズ教育の現場を概観し、2、3の大学での事例を紹介した。つぎに別府大学のアーキビスト養成課程をとりあげ、それを事例にしてアーカイブズ教育の問題点について述べた。このモデルでは、養成課程は大学+大学院をセットとし、学部教育では、将来大学院へ進学する者へのアーカイブズ基礎教育だけでなく、大学院へ進まないで卒業する者へのレコード・マネジメント教育の役割を与えるよう、設計している。アーキビスト養成の重要なキーは公文書館での実習と考えるが、今年度実施後、その結果を検討する必要を感じている。
  This paper first reports the overall situation on archival education programmes in Japanese universities both at undergraduate and graduate levels. Next, general issues regarding such programmes are discussed on the basis of experience at Beppu University. The course at Beppu is designed to combine undergraduate and graduate programmes as a continuing educational process. As for the undergraduate programme, the aim is twofold: the first is to make students aware of basic archival issues so that they will be prepared for future graduate‐level study, and the second is to teach students about record management issues so that those who do not proceed to graduate studies can make use of such knowledge in their employment immediately after graduation. Placement work at archival institutions is also included in the course but the university still needs to demonstrate the effectiveness of this area of education after one year's experience.
 
波多野宏之
  博物館、図書館、アーカイブズなどが扱う情報資料を広く文化情報資源と捉え、まず、「ドキュメンテーション」技術の形成と美術分野におけるドキュメンテーション・センターの実態を示して、こうした活動の存在がデジタル・アーカイブズの前提であることを強調する。次にアート・ドキュメンテーション学会の活動分野がこれら三つのディシプリンの統合の上に成立することを述べ、しかし、その教育研修システムは未形成であることを指摘する。第三に、駿河台大学文化情報学部の理念と教育体制を概説し、アート・ドキュメンテーションへの取組みを始めたことを特記する。最後に新たに登場した「痕跡の伝達」にかかわる研究としての「メディオロジー」の意義を検討し、こうした統合的視点が文化情報学のみならずアーカイブズ学教育においても重要であることを強調する。
  First, as for the information materials curated as cultural resources primarily in the three major disciplines(museums, libraries and archives),the historical process of the formation of the principles and technology of "documentation" is examined, and examples of documentation centers for art are presented. These fundamental processes should be agreed and established before digital archives are created. Secondly, the activities of the Japan Art Documentation Society rely on those three disciplines, but its professional training system is not yet systematized. Thirdly, the basic philosophy and education system of the Faculty of Cultural Information Resources at Surugadai University are presented. Art documentation is now formally incorporated into the curriculum. Finally, the notion of "mediology," the study on "transmission of cumulative heritage of traces," is discussed. It is argued that such integrated perspectives as mediology are necessary for professional education not only in the study of cultural information resources but also in archival science.
 
高山正也
  日本におけるアーカイヴズの整備・発展のためには専門職アーキヴィストの養成は不可欠である。しかし、現状ではアーカイヴズで指導者として働く職員は必ずしも専門職とは見なされていない。このために、日本でも専門職としてのアーキヴィストを養成すべきであると主張する人がいる。そこで著者はR.H.Hallの説に従い、アーキヴィストの社会構造的側面と態度的な側面から、専門職化が可能かどうかの評価を試みた。すなわち、職業、スクール、専門職団体、倫理綱領の存在があるかと言う社会構造に関する評価項目と、専門職団体の活用、大衆への奉仕の信念、自己規制の信念、職業的使命感、業務の自律性と言う態度的な指標についてである。この結果、日本のアーキヴィストは専門職化の途上であることが示された。
  The education of professional archivists is essential for the establishment and development of archives. At present in Japan, those who work in and manage archives are not regarded as professionals. Some people insist that education for archivists as professionals is essential for establishing and developing creditable archive institutions in this country. Following Prof. R.H. Hall's theory, the issues of professionalization must be evaluated from the viewpoint of social structure and individual behaviour within Japanese archives institutions and among archivists. As a result of an analysis of the situation, being an identifiable occupation, the existence of professional schools, professional associations and an ethical code are required in order that archivists may be considered as a profession. As for the issues of a social behavior index, there are the uses made of professional organizations, the principle of service to the public, insistence on self‐regulation, a specialist mission, and the autonomy as a profession. Thus, this author concludes Japanese archivists are only part of the way towards becoming a profession.
 
渡辺浩一
  本報告は、国文学研究資料館史料館が2002年に発足させた「アーカイブズ・カレッジ」の実践報告である。同カレッジはそれまでの史料管理学研修会を発展させて、現職者研修よりも大学院教育をめざした、アーキビスト教育大学院課程開設のための一種の実験である。受講生に高レベルの修了論文を書かせるために、カリキュラム外に指導教員が主催するゼミを開催し論文指導を行うなど、極力大学院修士課程に準じた教育を行っている。しかし、前後期あわせて6週間という時間的制約のために、演習・実習が十分にできず、論文指導も時間不足である。これからは、正規の大学院設置が望まれる。
  This paper is a practical report on the `Archives College' that was founded in 2002 by Shiryokan (Department of Historical Documents at the National Institute of Japanese Literature).This College, which developed from the training course for archivists, is an experiment in education for graduate students. The intention is that students should write required essays of a high standard, and thus the professors have established an education that is equal to the master's course in graduate school. But we have no time for seminars and laboratories because the length of the term is only six weeks. My aspiration is for the establishment of a formal graduate school.
 
木村玲欧;林能成
  被災経験がない市民には、非日常である災害を正確にイメージすることは難しい。長いあいだ大きな災害を経験していない地域の防災力向上には、過去の事例や他地域の事例から災害の実態・教訓を学び、災害文化を地域に継承することが必要である。
災害アーカイブは、未来の災害に備えるために災害・防災活動に関するさまざまな一次的資料を蓄積するだけではなく、一般図書や児童書・映像資料なども収集した資料室的な側面もあわせもつことが効果的である。このような考え方のもと、研究者のみならず地域市民や小中高校生、行政の防災担当者までもが学べる、災害・防災に関する各種資料を集積した「災害アーカイブ」を、東海地域の基幹大学である名古屋大学にて2003年4月から立ち上げている。
本報告では、市民防災教育のための災害アーカイブを立ちあげる過程について報告する。全国にある災害アーカイブ・資料室の先例を分析し、地域防災力向上のための災害アーカイブのあり方を提案した。現在は、市民の要望もあり、インターネットを通した検索システムも整備しており、項目・目次レベルでの言語検索が可能である。
  We have established the Disaster Internet Archive System (DIAS),which supports local residents in order to reduce the vulnerability of society to major disasters, and to pass down lessons and knowledge in the form of a disaster preparation subculture for any particular locality. The system places data about library and archive retrieval systems on the Internet. It also assembles data on various materials: books, reports, photographs, videos/DVDs, maps, etc. concerning disaster scenarios, disaster mitigation and preparedness measures. Furthermore, it has made not only researchers but also the residents of a locality, e.g. elementary, and junior and senior high school students, and administrators responsible for disaster prevention and management, a target since April, 2003.
Designed with Windows and Linux, we have developed a system that can retrieve required materials by keyword input on the Internet. We have done this because there are many books with titles relating to a wide range of disaster, and it is consequently difficult to retrieve information-specific materials. As a result, it is now possible to retrieve data by a single word, for example, "liquidized" "spread",and "rest room".
 
<第6号>«No.6»
 
現実を学ぶ―イギリスでの実践の場への理論の適用
Studying Reality : TheApplicationofTheoryinanAspect of UK Practice
(キャロライン・ウィリアムズ Caroline WILLIAMS)
  本稿では、理論と実践の間の関係の性質がどのようなものかについて、現在も続いている議論について述べる。その中で、アーカイブズの領域の内外での伝統的なアプローチを振り返り、より最近の理論について検討し、結論として両者の関係が動的なものであるということを示す。複数のイギリスのアーカイブズにおける評価選別理論の適用を調査したケース・スタディを紹介し、そこから、アーカイブズの組織としてのあり方によって実務家の反応が左右されるところはあるが、彼らの一部にとってはトレーニング、経験、直観が理論と同じように有効なものであることを明らかにする。
「理論的には、理論と実践の間にはなんの違いもない。実際には、ある。」
ヨギ・ベラ、アメリカの野球選手、1925 年生
「いい理論ほど実用的なものはない」
クルト・レヴィン、1890―1947
  This paper contributes to the ongoing debate about the nature of the relationship between theory and practice. It reviews traditional approaches, considers more recent ones, both within and beyoud the archival domain, and concludes that the relationship is a dynamic one. It offers a case study on the investigation of the application of appraisal theory in a range of UK archives, which demonstrates that training, experience, and intuition are of much use as theory to some practitioners, although responses are often shaped by the archives' organizational setting.
"In theory, there is no difference between theory and practice. In practice there is."
Yogi Berra, American Baseball player, b.1925
"There is nothing so practical as a good theory."
Kurt Lewin 1890―1947

*講演者による要旨。第6号に収録されている他の講演録や記事には、要旨がない。

 
<第7号>«No.7»
 
近世日本のアーカイブズ − 利用の側面を中心に
Early modern archives in Japan : From the perspective of their use
(冨善一敏 Kazutoshi TOMIZEN)
  本論文は、日本近世(江戸時代)のアーカイブズについて、当時の人々の利用のあり方を検討したものである。第1章ではこれまでの文書管理史研究について、「アーカイブズ学的文書管理史」と、「儀礼・由緒論的文書管理史」をキーワードに整理した。
第 2章では、村方文書の保存・管理と利用について、信濃国諏訪郡乙事村の事例を扱った。当村では文化 10年(1813)大規模な文書整理を行い、1点毎の検索が可能な文書目録帳を作成し「帳蔵」に収納した。以後名主が作成した文書は任期終了時に村役人立会の下改めが行われ、1)帳蔵に収納される非現用文書、2)年々交代する名主の手元に置かれる現用文書、3)作成当時の名主が保存する年貢・村入用関係文書という、その機能と保存場所を異にする 3つの文書群に分化したことを指摘した。
第 3章ではモノとしての文書の利用について、武蔵国秩父郡大野村で行われた検地帳祭りを取り上げ、近世の村方文書が一方ではマジカルな世界の中で存在したことを指摘した。
      Some examples of noteworthy ways of managing archives in the Edo era, i.e. early modern Japan, are discussed in this article.In the first section, the author has analysed previous works on record administration using categories such as "historical studies of document management from the perspective of modern archival theory" and "the history of records management in the context of rituals associated with document disposition and certain events".
    In section 2, an example of preservation, management and use of public documents by the villagers of Okkoto-mura in Suwa-gun, Shinano-no-kuni is discussed. In Okkoto-mura, a large-scale rearrangement of records was undertaken in 1813 which involved the creation of a list which allowed item-level retrieval of documents was created; and the construction of a cho-gura, a dedicated muniment repository. Thereafter, when a village headman's term of office expired, all the documents generated by him were examined by other senior village officials in order to classify them into three categories based on their function and how they would be stored:1)on-current documents to be housed in the cho-gura, 2)current documents to be handed on to the next headman, and 3)documents relating to tax and village expenditure to be retained by the headman who created them.
    In section 3 follows with a discussion of a tradition called the kenchi-cho. matsuri , or land ledger festival, performed in Ono-mura in Hiki-gun, Musashi-no-kuni. This demonstrates that the physical existence of documents was ritualised in early modern Japan.
 
日本における近代アーカイブズの萌芽 − 明治期の行政機関の文書管理制度を中心に
The germ of modern-archives in Japan : Records administration systems in the Meiji era
(渡辺佳子 Yoshiko WATANABE)
  封建制度が終わりを告げ、新しい近代行政機構がスタートする明治期に焦点を当て、明治期の行政機関の文書に対する認識の変遷を追いながら、アーカイブズの兆しにつながる行為、それが育ち得なかった環境等について考えてみたい。
現代の公文書管理の原点は、この近代行政機構がスタートする明治期にあると考えられる。年代を追いながら文書に対する政府の認識がどのように変化していくか、アーカイブズにつながる兆しがあったのかなかったのか、あったとすれば、それは育ったのか育ち得なかったのかなどについて考えてみたい。
      This paper discusses the circumstances which did not permit archive systems to develop in the Meiji era, the period when the feudal age finished and modern administrative organization started. It analyzes the government's concept of public records.
    Based on an assumption that our modern record administration system has its roots in the Meiji era, the paper tries to establish whether, however, there was any evidence of the birth of the concept of modern archives by undertaking a chronological examination of changes in governmental attitudes towards records administration. The paper also discusses whether it might have been possible for the development of any archival theory in the Meiji era.
 
近現代における行政アーカイブズ公開の歴史的検証 ― 明治後期〜昭和戦前期の図書館と府県庁記録
Public access to government archives in contemporary Japan : The role of the library in the preservation of prefectural government records between the late Meiji and pre-war Showa periods
(太田富康 Tomiyasu OTA)
  明治から昭和戦前期の日本では、アーカイブズ=文書館の誕生をみることはなかった。しかし、旧藩県期の記録や太政官制期の編纂資料など、限られた種類のものではあったが、府県庁の情報資源=記録や書籍が図書館に移管され公開されていた。それは、郷土資料として国民教化に資する〈力〉の利用であったといえる。アーカイブズの持つ〈力〉が選別され制御された結果であった。
しかし、専門家団体を得た図書館の指導者たちは、県庁記録を含めた郷土資料の蓄積を進め、「府県行政の参考機関」としての府県立図書館を提唱し、さらには「文書館独自の使命と機能」を認めてその設置を求めていた。戦後、他にも数千点規模の県庁記録が図書館に移管される府県があるなかで、日本最初の文書館が山口県立山口図書館から誕生した必然性は、戦前期におけるこれらの経験と蓄積の出会いにあった。
      Modern archival systems did not develop in Japan between the Meiji and pre-war Showa periods. However, some classes of archival materials from prefectural governments were transferred to their libraries and were opened to the public. Those materials include records generated by the preceding feudal lords and the formal records of administration compiled under the Dajokan government system of the early Meiji period. They were regarded as local history materials and local governments were aware of the potential embodied in them which could be used to acculturate their subjects.'The potential of the archives was selectively controlled.
    At the same time, leading librarians gradually became aware of the need for the proper management of those materials. Backed up by professional library associations, they collected the non-current records of the contemporary prefectural governments as well as local history materials and argued that setting up prefectural libraries as "reference institutions for local administration" was a necessity. Having realized the "unique nature of archives,"they then went further in arguing that proper archival institutions should be set up. Yamaguchi Prefectural Library provides one of the best examples. As an outgrowth of the library service, it led to the establishment of the Yamaguchi Prefectural Archives after WWII, the first modern archive institution in Japan.
 
対馬藩の御内書、老中奉書の選別 ― 18世紀後期における文書管理の転換
Appraisal of the gonaisho and roju-hosho of the Tsushima Clan : Change in document management systems in the late-18th century
(東昇 Noboru HIGASHI)
  対馬藩では宝暦期(1751-1762)まで御内書、老中奉書を選別して成巻し、寛政期(1789-1801)以降その全てを成巻するようになった。享保 12年(1727)、宝暦 5年(1755)の「御内書御奉書員数目録」と現存する老中奉書との比較を行った結果、御内書、朝鮮通信使関係の老中奉書のすべて、それ以外の老中奉書の約 3割を選別し成巻していたことが判明した。それらは将軍の就任、交代をはじめ、幕府、朝廷、対馬藩、朝鮮国関係の臨時 的な内容を選別していた。また未成巻の老中奉書は、将軍への挨拶、祝儀、献上など定期的な内容であった。そして寛政 8年(1796)の全成巻への転換の要因は、文書管理を担当する表書札方の管理の効率化、日朝貿易衰退に伴う対馬藩財政の幕府依存体制への変化と考えられることを明らかにした。
      In the domain of the Tsushima clan and until the mid-18th century, some of the gonaisho (letters issued by the Shogun) and roju-hosho (letters issued by senior officials of the Shogun) were selected and made up as rolls for future reference. The author has compared the description of the gonaisho gohosho inzu mokuroku (lists of the gonaisho and roju-hosho) with the extant letters and discovered that all the gonaisho, all the roju-hosho relating to Korean missions to Japan, and one third of other roju-hosho were enrolled. Those selected dealt with issues such as the inauguration of a new shogun, replacement of a shogun, and other occasional events relating to the central government at Edo, the imperial court, the government of the Tsushima domain and relations with Korea. Others not selected for enrolment dealt with routine matters such as greetings to the Shogun. In 1796, the rule was changed so that thereafter all such letters were enrolled. The author argues that this change was the result of administrative reform of the omote-shosatsukata (the record management division of the domain) as well as the decline in the Japan-Korea trade which led to the clan's financial dependence on the central government.

*執筆者による要旨。第7号に収録されている他の記事には、要旨がない。

 
<第8号>«No.8»
 
接収日系企業史料の試験的整理と史料構造の分析 −オーストラリア国立公文書館所蔵野澤組史料の事例−
Arrangement and description of a Japanese business collection held at the National Archives of Australia: An experiment
(秋山淳子 Junko AKIYAMA)
  本論文は、オーストラリア国立文書館シドニー分館が所蔵する接収日系企業史料の一つ、Nosawa & Co.史料(野澤組史料)を対象として実施した試験的整理と目録記述作成の実践報告である。
今回の整理に際しては、企業内で現用をはなれた文書を長期保存する際に用いられた、独自の文書分類法によって体系的に類別・整理された保存方式(「社内長期保存方式」と呼称)に着目し、編成基準を設定した。そして全体を11の「シリーズ」に編成し、フォンド・シリーズ・目録の各記述を作成した。
これらを通じて、野澤組史料の構造を分析し、企業活動の特徴と記録保存方式の対応関係について考察を行った結果、「社内長期保存方式」は一定程度企業の業務体系を反映したものであることが明らかになった。そこから、「社内長期保存方式」が企業史料の体系性理解の糸口となりうること、整理・編成において「社内長期保存方式」に基づき基準を設定することは、とくに野澤組のような小規模企業史料の場合、アーカイブズ学的な視点からも適切であるとの考察を行った。
      This article is a report on an arrangement and description project dealing with the records of a Japanese firm, Nosawa & Co., held at the National Archives of Australia, Sydney Office. A trading company, its main activity was the export of live sheep to Japan. Its records represent one collection, among twelve such, seized by the Australian government during World War II. The firm was a relatively small enterprise with no clear organizational structure.
The project team respected the company's original arrangement system which it had adopted for the long-term preservation of its non-current records. In light of that, they created eleven series. The compilation of a three-level description, i.e. fonds, series and item, followed. Through further analysis of the internal structure of the records, it became clear that the characteristics of the company's business were well reflected in its record-keeping system. Therefore, it is argued that it is appropriate from an archival point of view to arrange company records, especially of smaller enterprises like Nosawa, according to a firm's original record-keeping systems established to reflect particular business needs.
 
映画関連企業資料の現状と問題点
Problems relating to Japanese film industry records
(加藤厚子 Atsuko KATO)
  映画は芸術作品であると同時に、企業により販売され世界規模の市場で消費される商品である。近年、映画は文化財・歴史資料として研究されているが、映画に関わる企業の企業資料については看過されてきた。映画という商品の特性や、企業における保存意識の低さから、映画関連企業資料の実態は明らかではない。その一方で、世界では企業資料を含む「映画遺産」の保存意識が高まっている。本稿では、映画関連企業資料の特徴を分析し問題点を指摘した上で、資料管理の観点から大手映画会社の歴史を概観し、企業資料の現況把握を試みる。そして関連機関によるアーカイブの取り組みを検討し、映画関連企業資料の調査・保存・公開における問題点を指摘し考察を行う。
      Films are artistic products and a business commodity in a giant worldwide market. Although, the status of films as historical and cultural assets has been increasingly acknowledged, attention has not been paid to business records relating to their production in Japan. Film companies themselves do not recognize the importance of conserving their records and thus it is not clear what sources exist. By contrast, in recent overseas discussion, recognition has been achieved for "film heritage" including, as an integral part, the preservation of its business records. This article outlines the history of the activities of well-known Japanese film companies from an archivist's perspective, and seeks to outline the current status of their business records. Finally, the article looks into ways that organizations with an interest in the film industry could be involved in surveying such records, their conservation and making them available for research.
 
「自己点検・評価」・「教育研究」と大学アーカイブズ
Self-monitoring and self-evaluation, and education and research vis-à-vis university archives
(菅真城 Masaki KAN)
  近年、国立大学にアーカイブズが設置されているが、これらのアーカイブズの多くは大学年史編纂室を前身とする。1991年、文部省令大学設置基準が改正され、自己点検・評価が努力義務規定として盛り込まれた。この段階で大いに主張された言説に、「大学史編纂活動は大学の自己点検・評価活動であり、自己点検・評価を行うには大学アーカイブズが必要である」というものがある。本稿ではまずこの言説について省察する。そしてその作業を通して、「教育研究」機関である大学アーカイブズは、「教育研究」に関する資料や情報を集積せねばならないことを主張し、大学アーカイブズの特徴について抽出することを試みる。
      In recent years, university archives have been established at national universities in Japan. The predecessors of such university archives were the editorial offices responsible for the publication of university histories. In 1991, the official requirements for the establishment of a university were amended to provide for "self-monitoring and self-evaluation". At that time, it was stated, "compilation of university histories is an aspect of self-monitoring and self-evaluation, and in order to achieve those two objectives, it is necessary to establish university archives". In this paper, I reflect upon that remark. Furthermore, I argue that university archives should accumulate "educational and research" materials and information. Lastly, I endeavour to define the institutional characteristics of university archives.
 
段階的整理におけるコストパフォーマンス −アメリカの手引書類の分析から−
Phased processing and the cost performance: An analysis of American archival manuals
(坂口貴弘 Takahiro SAKAGUCHI)
  「文書館学的史料整理論」については、手間がかかり実践が難しいといったコストパフォーマンスの観点からの批判が寄せられているが、欧米のアーカイブズ整理論を参考にして提唱された「段階的整理」の考え方には、むしろこの観点に近い要素が見出せる。そこで、段階的整理の実践をめぐる以下の課題を取り上げ、アーカイブズ整理に関するアメリカの手引書類ではこの観点を考慮しているかを調査した。1) シリーズをどう設定するか、2) 分析的整理はどのレベルまで行うべきか、3) 物理的整理はどのレベルまで行うべきか。いずれの課題に関しても、アメリカの整理手法にはコストパフォーマンスを重視する視点が貫かれており、段階的整理法を理解・実践する際にもこの視点は有効であると考える。
      Japanese archival methods of arrangement and description have sometimes been criticized as not being cost-effective. Paradoxically, the concept of "phased archival processing", which is based on Western archival theories and principles and which was propounded in 1980s, does in fact seem to contribute to the cost-effective processing of records.
This article examines four standard processing manuals published in USA and explores the following issues: 1) How records are arranged by series; 2) The extent to which records should be processed intellectually, and 3) The extent to which records should be physically processed. The overall conclusion of the analysis is that American manuals actually emphasize the cost effectiveness of those processing tasks. This should be taken into account in Japan when interpreting and applying the Western tradition of "phased archival processing".

*執筆者による要旨。第8号に収録されている他の記事には、要旨がない。

 
<第9号>«No.9»
 
アーキビスト資格論議の歩みと資格制度提言
The development of debate on how to qualify archivists and proposals for a qualification system
(高橋実 Minoru TAKAHASHI)
  アーキビストの資格問題の核心を探るには、その問題に関わる過去の論議の歩みを振り返ってみることが不可欠である。過去の論議史の整理それ自体、今後、アーカイブズの専門職問題を議論するための基盤づくりであり、素材提供でもある。この歴史的アプローチをもとにいくつかの提言を行いたい。
アーカイブズ運営の中軸はアーキビストであり、そのアーキビストは専門の養成機関で育成されるが、アーキビスト養成の問題はアーカイブズ学の研究体制の確立と密接不可分の問題として考えるべきである。そして専門職として社会的に位置づけられるには、資格制度や専門性を生かす人事制度が必要不可欠である。
      In order to get closer to the heart of the issues on the certification of archivists in Japan, it seems essential to look back to earlier discussions relating to this problem. Such an exercise will entrench the foundations of, and provide useful research materials for current discussions. This article presents some recommendations based on such retrospective approaches.
It should be noted that archivists should play the leading roles in the administration of archive institutions, and they should be trained as professionals in special educational institutions. In addition, it is necessary that the development of archival training is conducted in such a way as to link it closely to the infrastructure for archival research. Also it is essential to develop both a certification system and special personnel career structure for archivists in order that they can be recognized as a professional body in Japan.
 
日本における養成課程と資格制度の提案 −国内外の蓄積から学ぶこと
What is a suitable archival education and professional qualification system for Japanese society?: A proposal
(森本祥子 Sachiko MORIMOTO)
  本稿は「アーキビスト資格制度の構築にむけて」という提言の一部を構成するものとして、これから日本でアーキビスト専門職の養成課程・資格制度を構築していくにあたり、どのような形をとることが望ましいかを提案する。具体的には、まずアーキビストが専門職である必要性と、その養成には大学院教育が必要であることを確認する。その上で、海外のいくつかの養成課程・資格制度の先行事例を分析し、合わせて日本で行われてきた研修についても分析し、日本に適合的なあり方について検討する。
      This paper constitutes part of a proposal"Towards the establishment of a professional qualification system for archivists" which has been put forward by Dr Takahashi and the author. First, the reason why we need a professional qualification system supported by post-graduate level education is explored, and secondly there is an analysis both of various overseas archival education courses and qualification systems, and Japanese experience in archival training. The paper concludes with a suggested education curriculum and the claim for the necessity of a professional qualification system suitable to Japanese society.
 
地域史料としての台紙付写真に関する一考察 −写真史料学の構築に向けて
Mounted photographs as sources for local history A study towards establishing photograph analysis within history and archives
(尾崎泰弘 Yasuhiro OZAKI)
  写真を豊かに活用していくためには、文書などと同様コンテクスト情報が重要である。特にこれまで意識されていなかった撮影の目的・動機や、写真撮影技術が写真師にほぼ独占されていた時代においては、撮影依頼者にも注目していく必要がある。しかし、歴史的な価値が高く地域史料として収集されている台紙付写真においては、これらの情報は伝存の過程で失われていることが多い。そこでその撮影年代を復元するために、写真台紙を史料学的に分析し、その特徴と撮影年代との関係を明らかにした。今後、このデータをより精緻にしていくためには、史料保存機関で写真台紙のデータを共有化していくことが必要である。そのための共通の基盤として写真史料学が今求められている。
      It is essential to include contextual information in finding aids in order that users can make full use of photographs as archival sources. In particular, verbal explanations do not usually accompany older photographs. That is because in commercial photography the photographer and the client were always separate parties, with the photographer in control of technique and product. Thus information about the client constitutes an element of contextual information. Many mounted photographs collected as regional historical sources have often lost their contexts years earlier. This paper explains how it is possible to date undated photographs in historical and archival collections from the range of characteristics inherent in their mounts. We should make such fundamental information available in archive institutions and museums and improve its accuracy. Photograph analysis in historical and archival studies is increasingly needed for establishing a shared infrastructure for their activities.

*執筆者による要旨。第9号に収録されている他の記事には、要旨がない。

 
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